第四回 教養学部総合社会科学科国際関係論分科 3年 井上朋美さん

旅先で出会った人達。右端が井上さん。
――留学先の大学を教えてください。
ペルーのカトリカ大学(Pontificia Universidad Católica del Perú)に2008年8月から2009年7月まで留学していました。私立の有名大学で比較的富裕層が多く、学部といった区分は特にありませんでした。また、大学名の通りカトリック系の大学ですが、大聖堂があるくらいで特に宗教色を感じさせませんでした。
――留学動機、特にペルーを選んだ理由を教えてください。
もともと高校の頃から途上国支援に興味があり、大学生になってから、フィリピンに留学した当時4年生の先輩からお話を伺ったことでさらに刺激を受けました。そして自分でもフィリピンを訪問してみて、実際に目で見て現地の方々と交流しないと分からないことがあることに気づかされました。
留学先は、第二外国語として勉強していたスペイン語の能力を活かしたかったので、スペイン語圏の途上国に決めました。教養学部のAIKOMを利用したチリ留学やメキシコへの国費留学も選択肢として考えましたが、時期や年齢制限に引っかかり、最終的には一番興味関心が合致したペルーへ個人で留学することにしました。
――留学に必要な準備はどのようなものでしたか?
大学間の交換留学ではなく、東大は休学して個人的な伝手を辿って留学しました。ペルーへ留学しようと決めた時、ペルー留学中の先輩から東大にペルーにコネクションの強い教授がいるという情報を得て、早速その教授にメールを送り、直接部屋を訪ねてみました。非常に忙しい方でしたが、なんとか時間を確保していただき相談に乗ってもらいました。最終的に教授から現地大学を紹介していただき、留学の夢が叶いました。私は元々行動する前に深く考えてしまう性格でしたが、この頃から積極的に行動して物事を実現していくことを心がけるようになりました。個人での留学でしたが、幸いにも東京大学国際交流奨励事業から奨学金をいただくことができました。それから行き先が南米であったので、出国前は予防接種などが大変でした。
――留学先ではどんな科目を履修しましたか?
AIKOMを利用した交換留学ではないため、現地の授業は復学後の単位交換が効かず、せっかくなので現地しかで学べない講義を自由に取っていました。「ラテンアメリカ政治」、「ペルー教育事情」など色々な授業を取っていて、その中で「ペルー社会の実情」が一番面白かったです。現代史から社会問題まで扱い、さらにフィールドワークでペルーの現状を肌で感じることができました。中でもスラム見学での経験は衝撃的でした。トタンの家が目立ち、それも山の斜面など人が住みにくい場所にあります。電気もガスもなく、不法入居や盗電は当たり前でした。フィールドワークでは実際に支援活動家と対話したり、スラムに入ったりすることで問題を一緒になって考える機会となりました。
――現地の雰囲気はどうでしたか?
途上国特有の富裕層と貧困層が分かれて住んでいる状況を目の当たりにしました。しかも富裕層には白人、他は先住民や混血が多く日本では想像できない現状がそこにはありました。治安は決して良いとはいえません。危ない地域では細心の注意が必要でした。私の住んでいた寮の近くは比較的安全でしたが、友人に会うためにタクシーで遠出をした際には、値段を吊り上げられて怖い思いをすることもありました。
――どんな課外活動に挑戦しましたか?
現地の人達と触れ合える活動に力を入れていました。まず、大学のソフトボールチームに入りました。私はセカンドを守り、地域の大会では準優勝することができました。ここでのチームメイトとはお互いの国籍を全く気にせずに接することができ、非常に親密な関係を築くことができました。大学寮の友人達とサンドボードと言って、砂漠をソリで滑る遊びをしたり、2ヶ月程かけて南米バックパック旅行をしたことも良い思い出です。活動を通して本当に多くの人達との出会いがありました。彼らとは今でもメールや手紙で連絡を取り続けています。
定期的にボランティアにも参加しました。親がいなかったり、DVを受けていたストリートチルドレンの宿題を手伝ったり、一緒に遊んだりする仕事です。ペルーの社会問題を直視する機会となり、また自分の役割、出来ることを認識する場ともなりました。子供が落ち込んでいる時に何もしてあげられないことがすごく悔しかったです。そんな時、スタッフの方から、ただそばにいて手を握ってあげるだけでも母性に飢えている子供たちに安心感を与えてあげることができることを教わり、私に出来そうなことはとにかく実践しました。
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サンドボード体験
――留学前後で考え方やライフスタイルに違いがあれば教えてください。
留学を経て、日本人としての当事者意識が高まりました。ペルーでは一年間、日本の代表として過ごす中で日本を客観的に見ることができ、日本が良い国であってほしいと思うようになりました。自分もそれに貢献できる人でありたいです。将来そんな人になるため、専門分野である国際関係論はしっかり語れるように努力しています。
実際にペルーで生活を始めるまで、ここまで自分が一人では何もできないと思っていませんでした。同時に全く知人のいなかったペルーで私を迎えてくれた周囲の人達の暖かさにも気づきました。特にスラムへ行く時にお世話になった方からは、「何か始めたい時は周囲を巻き込んで良い。してもらうばかりだと思うなら、別の機会に他の人に返してバトンをつないでいけばいい。」ということを教わり、これは日本に戻ってきてからもずっと意識しています。

井上さんの送別会にて。
――最後に東大生に向けて何かメッセージをお願いします。
東大には能力のある人が揃っていると思います。しかし、私が一歩外へ出て思ったことは一人で出来ることは小さく、必ず周りの協力なくしては達成できないことが多くあるということでした。私の留学も多く人達の支えがあってのものでした。周りの人を大切にし、いざ行動という時に手伝ってくれる仲間を作る、また自分も周囲の人達を助けてあげられる人であることが大切だと思います。
―ありがとうございました。